肥料と補いはなにが違うの?:自然農Q&A
今回は肥料と補いの違いについてです。
自然農では基本的に堆肥や肥料は入れませんが、油かすや米ぬかを畑にまくことはあります。
それは「肥料」ではなくて、「補い」と呼ばれています。
え、どこが違うの?って感じですよね。
僕も最初はそれを聞いて、無肥料といってもやっぱり少しはあげないとできないんだなという感想を持ちました。
しかし、実際に自然農をやっていくなかで、それは単に呼び方が違うのではなく、目的が違うのだと分かってきました。
僕はよく畑を車に例えて説明しています。
肥料は「ガソリン」であり、補いは「潤滑油」です。
同じ油ですが、目的は異なります。
つまり肥料は「栄養素を与える」という目的であり、補いは「生態系の循環を円滑にする」という目的があるのではないかと思っています。
不思議すぎる!なぜ自然農では肥料がいらないのか? :自然農Q&A - のおとの日々
という記事でも書きましたが、自然農では自然界の「増えるサイクル」を利用します。
このサイクルがスムーズに動いているときは、問題なく野菜が育ちます。
しかし野菜の種類によってはうまくそのサイクルに入り込めないこともあります。
また草を刈りすぎたり、土をいじりすぎたり、補いを与えすぎたりしても、このサイクルはスムーズに回らなくなります。
自然農の3原則「耕さない」、「持ち込まない持ち出さない」、「草や虫を敵としない」は、このサイクルをスムーズに動かすための原則だと言ってもよいかもしれません。
そのサイクルがうまく回らないときに、まさに潤滑油として使うのが「補い」です。
ガソリンとしての肥料と違い、ほんの少しの量でよいのです。
どのタイミングでどの程度与えるかは、畑の状態や野菜についてよく知っていなければなりません。
僕も補いの量については、まだよく分からないとこがあります。
同じ畑の中でも育ち方は全く違いますし、毎年状況は変わりますので、ここらへん経験とカンが便りです。
ただ僕らが研修を受けていた畑は、20年以上自然農をしているためか、ものすごく安定した地力があるので、経験や勘がなくとも勝手に野菜が育ってくれていました。
西洋野菜などの見たこともない野菜でも、特に栽培方法を知らなくても植えたら育ってくれていたのです。
もちろん毎回うまくいくわけではありませんが、これにはほんと驚きました。
それに補いはある程度であれば、もしやり過ぎたとしても別に畑として致命的な状態になるわけではありません。
野菜が虫に食べられてしまったりするだけで、そのままほっとけば自然と解決されていきます。
追記:
補いとしては油粕や米ぬかなどを使っています。
師匠の松尾さんのところもそうでした。
そういった植物原料で、ある程度分解されやすい状態のものがサイクルに入っていきやすいのかもしれません。
循環させるという意味で、家庭から出る野菜くずなどを返すパターンもあるようですが、実際には難しいようです。
分解されるのに時間がかかるし、野生動物を呼び寄せてしまうこともあるそうです。